終わりのない幻影
真実とは何か。
真実とは真理であり、
嘘偽でないもの。
――けれど。
誤りも幾度となく繰り返されることによって、
真実となりうる。
一度真実となったものは、
どこまでいってもそれが真実なのだ。
間違いを正さない限り、
幻影はいつまでも、真実でありつづける。
〜 プロローグ 〜
五十年ごとに行われてきた儀式があった。
前回の儀式では、三人が犠牲となり、山鳴りが静まった。
儀式を取りやめようとした矢先の犠牲者。
それが、ちょうど、五十年前のこと。
「やめるわけには、いかん」
「でも綾香は……」
「綾香は、承知したよ」
息を殺して、ふすま一枚向こうで行われている会話に聞き耳を立てている少年が一人。
「本当に、承知したんですか? 母さん」
「信用せんなら、これから綾香に聞くか?」
「――ええ」
立ち上がる気配。そして……。
「いいんですか? 出しっぱなしで」
「ああ、すぐ戻るからええやろ」
二つの気配が消えるのを待って、少年は動いた。
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