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0、 後ろポケットに突っ込んであった携帯が、ぶるりと震えて、事務所のソファーで本を読んでいたコナンは、「うわっ」っと小さな声を上げて立ち上がった。 そんなコナンを見やり、小五郎が散らかしたビールの缶や書類を片付けていた蘭が、首を傾げながら言った。 「コナンくん、どうかしたの?」 「な、なんでもないよ。携帯がぶるってして、びっくりしちゃっただけ」 言いながら、へへへっと笑ったコナンは、ポケットから携帯を取り出すと、ちらりっと発信人を確認した。そこに表示された『服部平次』の名に、コナンは蘭に気付かれないように舌打ちした。 「僕、ちょっと電話してくるね」 そう宣言して、事務所を出たコナンは、急いで自分の部屋に足を向けた。 部屋に入って一息ついたコナンは、ようやく着信ボタンを押した。回線が繋がって「もしもし」と言おうとした、その瞬間、『遅いっ!』と言う大きな声が耳元で響いた。 慌てて耳をふさいだコナンは、顔を顰めながら携帯を耳元から離した。 少しばかり出るのが遅れただけで、何故ここまで言われなければならないのか。一瞬、このまま切ってやろうかと思ったが、どうにか思い留まったコナンは、思い切り不機嫌そうな声を出した。 「うっせぇな。おっちゃんの事務所にいたんだよ。蘭がすぐ横にいるのに、そうすぐに出られるかよ」 『別に、かまへんやん』 「お前は構わなくても、オレが構うんだよ」 『なんや、面倒やな』 言った平次に、コナンは思わず深い溜息をついた。 「で? なんか用か?」 『別に、用って程の事でもないんやけどな』 その言葉に、コナンは思わずむっとした。 よく、平次はこうやって、わけもなく電話をかけてくる。別にそれが悪いとは言わないが、毎回毎回、それに付き合わされる、こちらの身にもなってもらいたい。 新一宛に、平次から電話が掛かってくるのなら、まあ、それほど不自然ではない。だが、平次からコナンに電話が掛かってくると言うこの状況は、はっきり言って不自然なのだ。
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