■ Phantom Pain ■
 A5フルカラー  108P 200g 平×新(コ)
¥ 1,100  (送料 210円)
Novel   綾部 澪 / Illustration  小椋さよこ さま

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【0】

 耐えられないほどの激痛に襲われ、コナンは弾かれたようにベッドから飛び起きた。
 まだ薄暗い室内に、荒くなった呼吸がやけに大きく響いていた。それを整えるように大きく深呼吸すると、コナンは、ぽつりっと言った。
「夢、か――」
 早鐘のように脈打つ心臓は、少し余分に酸素を送ったくらいでは、治まらなかった。何度か深呼吸を繰り返したところでようやく落ち着いたコナンは、額にじんわりと浮かんだ汗を手の甲でぬぐった。


 毎夜、夢を見るのだ。
 あの解毒剤を飲み、工藤新一に戻る。
 その時の、激しい痛みに襲われる夢を――。
 その夢の中では、例外なく『コナン』は『工藤新一』に戻っていて、起きた時に戻っていない自分の体を見て、酷く落胆する……。そんな事を繰り返していた。

 だが――。
 ここ最近の夢は、今までのものとは違っていた。
 今までは、激痛に襲われたあと、元の姿に戻っていたのに、痛みだけが延々と続き、身体は元には戻らないのだ。永遠にも感じられる時を、ただひたすら、激痛に耐え続けることしかできず、のた打ち回るのだ。
 そして、その苦しみからようやく開放されるのは、夢から覚めた時。
 いや、夢から覚めたとしても、鈍い痛みはまだ自分の中に残っていたが――。