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4、 「広告デザイン賞――ねえ」 ポツリとつぶやいた新一は、手の中にあった件の文書を、机の上に投げ捨てた。 そのまま、うんっと大きく伸びをすると、ソファーにべったりと背を預ける。そして、視線だけを、投げ捨てた文書にちらりと向けた。 捨てたところで、文章の内容が変わるわけがない。 そこには、先ほどまでとなんら変わりのない、催し物案内以外には見えない一枚の紙切れがあるだけだった。 この文書に秘されたものが、一体何であるのか――。 どれだけ考えても、まったく見当がつかなかった。 最初から、そう簡単に解けるとは思っていなかったが、これほどまでに手古摺る予定ではなかったのだ。 目頭を押さえた新一は、ついっと頭上に視線を向けた。 晧々とついた電気が目に入って、新一は眩しそうに目を細めた。 もう、いい加減、考えることを放棄してもいいのではないだろうか――。 そんな思考が、新一の脳裏をちらりと過ぎった。 この文章に秘された謎を、なんとしても解いてやるという気概は、この数十分の間にほとんど費えてしまっていた。 お手上げだといわんばかりに、両の手を上げた新一は、海よりも深いため息をついた。 ――と、早々に暗号解読からリタイアしていた平次が、すくりと立ち上がった。そのままキッチンに足を向けた平次は、冷蔵庫を開けると中を覗き込みながら「う〜ん」っと唸り声をあげた。 そんな平次の様子を、ただぼんやりと目で追っていた新一は、訝しげに眉を寄せた。 いつもの事ではあるが、冷蔵庫の中には、悩むほど物は入っていなかったはずだ。新一の記憶が間違っていなければ、入っているのは、多少の飲み物と、一昨日、蘭が出かける前に持ってきた煮物くらいだ。それなのに、いったい何を悩んでいるというのか……。 しばらく中を眺めていた平次は、そこからミネラルウォーターを取り出すと、それを美味しそうに飲み下した。そして、ちらりと新一に視線を向けた平次は、小首を傾げながら口を開いた。 |