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Heiji-1 車窓を流れる景色は、いつもと変わらないはずだった。 それなのに、流れ去っていく景色がいつもとは違って見えるのは、気のせいだろうか。 新幹線から見える景色が変わるはずがないのだから、気のせいに決まっている。 頭ではそう思っているのだけれど、何故だか、心は躍っていた。 いや――。 何故、ではない。 こんなふうに思うのは、俺がこの日を待ち望んでいたからだ。だから、ふとした瞬間に、口元が緩んでしまうのは、仕方のない事なのだ。 どこか言い訳でもするように、俺はそんな事を思った。 この春から大学生になる。 自信がなかったわけではないけれど、それでも、試験が無事終わったコトに、ほっとしていたのは事実だった。 試験と言えば、俺よりも工藤の方が大変だったとは思う。 そんな事は、工藤はおくびにも出さなかったけれど。 まあ、あのプライドの高い工藤が、そんな事を口にするわけもないのだが、工藤が何も言わないのならば、俺がわざわざ口にする必要もないわけで。それについて言及するつもりもなかったが。 なんにしても、念願の東京だ。 これで、東京大阪間を行き来する必要がなくなるわけだ。 かなりの頻度で、行き来をしていたというのに、まさか自分が、この東京で暮らす事になるとは予想すらしていなかった。大阪を離れるつもりなど、毛頭なかったからだ。 だが、丁度一年ぐらい前、状況が変わった。 最初に会った時には『江戸川コナン』であった工藤が、元の姿を取り戻したから。 ――いや。 別に工藤が元の姿に戻れなかったとしても、自分は上京する事を選んだだろう。 だから、工藤が『もとの姿に戻ったから』という事自体は、理由ではないのだけれど。 だが、そんな理由など、どうでもいい事だった。 春から工藤と同じ大学に通う事は、変えがたい事実なのだから。 ともすると、にやけたままになりそうな顔をどうにか引き締めた俺は、ぱんぱんっと頬を叩いた。そして、小さく息をつきながら呟く。 「いい部屋が、見つかるとええんやけどなあ」 上京するのならば、当然、住処も考えなくてはいけない。 ※ RelayNovel「キミニネガウ1」の加筆再録になります。大元はこちらに。 |