■ 果てなく続くこの道は、ドコまで行っても青空で ■
 A5フルカラー  100P 200g 平新
¥ 1,100  (210円)
Novel  綾部 澪
 / Illustration  小椋さよこ さま

* 画像、文章の無断転用・複写は固くお断りいたします *
0、

「お〜い、工藤〜」
 そんな声とともに、ドアの開く音がした。
 まだ重い瞼を、無理やりこじ開けた新一は、ちらりっと声のしたほうに視線を向けた。
 そこに平次の姿を認めた新一は、くるりと背を向けると、頭をかくすように布団をかぶった。
「ええ加減にせえや。もう、朝やで? 何を、いまさら布団かぶり直しとんねん」
 言いながら、部屋に入ってきた平次は、新一がかぶり直した布団をがばっと剥いだ。布団の中で暖められていた空気が霧散し、冷えた空気が肌を刺した。
 ぶるりと身を震わせた新一は、恨めしげに平次を見やると、平次の手から布団を奪い返した。そして、再度、布団を被るとぶちっと言った。
「うっせえな。別にいいだろ」
「飯、冷めてしまうで?」
 そんな平次の言葉に、新一は布団から目だけ覗かせると、時計に視線を向けた。まだ、七時になったばかりだった。
「って、まだ七時じゃねーか。今日、二限目からだろ? なんで、こんな時間に飯とか言ってんだよ」
「ちょっと、野暮用でな。今から、出るんや」
「今から?」
 ぎょっとしたように言った新一は、反射的に身体を起こした。どんな用事なのかは分からないが、七時はかなり早い時間なのではないだろうか。
「――なんだよ、野暮用って」
 まだ、目覚めきっていない頭でそう問うと、平次は「野暮用は野暮用や」と短く言った。まったく答える気のないらしい平次に、新一はくしゃりっと前髪を掻きあげると、いささか不満そうな表情を浮かべた。
 別に、その用事とやらが、どうしても、聞きたかったわけではなかった。けれど、なんとなく「お前には関係ない」と言われたようなきがして、面白くなかったのだ。
 眉間にしわを寄せた新一を見やり、平次はからからと笑いながら言った。
「なんや、えらい不満そうやなあ」
「不満そう、じゃなくて、不満なんだよ。質問には、ちゃんと答えろよ」
「まあ、ええやないか。そんな細かい事は」
「都合が悪くなると、すぐ、それだな」
 ぶちっと言った新一に、平次はまったく意に介さないというように口を開いた。