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最期の宴が、始まる――。 [1] 降り注ぐ強い陽射しに、新一は目を細めながら、空を見上げた。雲ひとつない空はどこまでも青く、空気はからりと乾燥していた。つい先日までの、どんよりと重苦しい空気が嘘のようだった。 既に、夏の様相だ。 額に浮かんだ汗を手の甲でぬぐった新一は、横を行く平次をちらりと見やると、小さく息をついた。 昨晩、例の如く工藤邸に泊まった平次が「どっか、遊びに行かへんか?」と言ったのは、時計の針が昼を回ったころだったか――。 はっきり言って、外出などしたくなかった。それなのに、強引に連れ出されたのだ。 「それでな。萱野のヤツが――」 延々と喋りつづける平次の声を聞き流しながら、新一は適当に相づちを打っていた。 今日の平次は、なぜかとても上機嫌で、家を出てからほとんど喋り詰めだった。よくもまあ、これだけ喋りつづけられるものだと、呆れてしまうほどだ。 それにしても、一体、どこに向かっているのか。 家を出る時には行き先を限定しなかったが、どうやら目的地があるらしく、平次の足取りに迷いは無かった。だが、連れ廻されるほうにしてみればたまらない。 |